建設現場の遠隔管理をスマートに 〜建設現場のデジタルツインを実現〜 (CUS-37) #AWSSummit
本稿は、AWS Summit Japan 2021のセッション動画「CUS-37: 建設現場の遠隔管理をスマートに 〜建設現場のデジタルツインを実現〜」のレポート記事です。
概要
"建設現場デジタルツインを実現!AWSを活用し建物3次元モデルにモノやヒトの動きをリアルタイム可視化" 鹿島建設では、生産性の向上と働き方改革の実現を目的に「鹿島スマート生産」を推進しており、建設現場の遠隔管理を支援するリアルタイム現場管理システム「3D K-Field」を開発しました。本システムは、建設現場内の人や資機材の位置をIoTで収集し、BIMモデル上にリアルタイムに3次元表示します。現場のカメラ映像など管理に必要な諸情報も表示でき、現場事務所や本社・支店からの遠隔管理を支援します。竣工後の建物管理やスマートシティのデジタルツイン基盤での応用も期待される本システムについて、その導入事例を紹介します。
スピーカー
- 天沼 徹太郎 氏
- 鹿島建設株式会社 建築管理本部 建築技術部 技術企画グループ
内容
- 会社紹介
- 建設現場のデジタル化「鹿島スマート生産ビジョン」
- 建設現場の遠隔管理の目的
- 建設現場のデジタルツインの実現「3D K-Field」
- システム構成紹介、開発の進め方
- 今後の展開
会社紹介
- 高度な施工技術を核として、建物のライフサイクルを鹿島グループでサポート
- 企画・開発、設計・エンジニアリング、施工、運営・管理、維持・修繕
- 北米やアジアに現地法人を置き、グローバルに展開している
- デジタル技術を活用したビジネスモデル変革も積極的に推進しており、DX銘柄2020年に選定
- 鹿島スマート生産ビジョン(建築部門) ← 本セッションで解説
- 現場の工場化(土木部門)
- 鹿島スマートBM
- スマートシティ ← 本セッションで解説
建設現場のデジタル化「鹿島スマート生産ビジョン」
- 作業員不足の常態化
- 2008年: リーマンショック
- 多くの建設業者が離職した
- 2011年: 東日本大震災
- 2013年: 東京オリンピック決定
- → 建設需要の増加、作業員不足が課題となっている
- 出典: 報道発表資料:建設労働需給調査結果(令和元年5月調査)について - 国土交通省
- 2008年: リーマンショック
- 建設業では高齢化も著しい
- 55歳以上の比率: 全産業 29.3% vs 建設業 33.9%
- 29歳以下の比率: 全産業 16.4% vs 建設業 11.4%
- 出典: 国土交通省「建設業及び建設工事従事者の現状」
- 「鹿島スマート生産ビジョン」を策定
- 業界の魅力を高める
- 生産性の向上
- 働き方改革の実現
建設現場の遠隔管理の目的
- 人: 建設現場を少人数で効率的に管理する
- 「施工計画・もの決め」の仕事
- 詳細仕様の決定
- 材料発注・コスト管理
- 工程作成(大枠)
- 施工計画(大枠)
- 図面作成
- 「現場運営」の仕事
- 工程作成(詳細)
- 施工計画(詳細)
- 作業手配・調整
- 検査
- 現場の問題対応
- 数年前のある若手社員の1日
- 08:00 ~ 08:15 朝礼
- 08:15 ~ 09:45 現場巡回し、作業内容の確認や指示を行う
- 10:00 ~ 11:15 事務所に戻り事務作業
- 11:30 ~ 12:00 作業間連絡調整会議
- 13:00 ~ 13:30 事務所にてメールチェック、作業確認など
- 13:40 ~ 15:00 再び現場巡回へ
- 15:10 ~ 16:50 事務所に戻り、夜勤の仕事の確認・調整
- 17:00 ~ 18:00 三度現場へ行き、夜勤作業の指示
- 18:15 ~ 19:00 事務所に戻り、調整作業・メールチェック
- 20:00 帰宅
- 傾向
- 緊急度も重要度も高い仕事は、現場対応が多い
- 緊急度は低いが重要度は低い仕事は、主に計画業務
- → 現場におけるその場の対応業務を減らし、重要度の高い計画業務に集中できるように管理を進めための遠隔管理
- 「施工計画・もの決め」の仕事
- 資機材: 探す時間の削減、レンタル費用削減
- 資機材 = 作業台や台車など
- 資機材は鹿島建設が数千台レンタルし、協力会社に貸し出す
- 現場では自分が使いたい機材を探す手間が発生している
- 月額10~15万円かかる高所作業車を、大きい現場は数百台も導入する
- 竣工時、レンタル品を返却すると大量に紛失が発覚、減損額は数千万円以上になることも
- 工事車両: 待ち時間の削減、ストレスの軽減
- 現場には多くの車両が出入りする
- → 車両の運行管理が大切
→ 上述の課題を解決するために、3D K-Fieldを開発
建設現場のデジタルツインの実現「3D K-Field」
- 建物の可視化プラットフォームとして、様々なIoT情報をBIMに重ねることで、デジタルツインを実現する
- 鹿島建設、マルティスープ株式会社、アジアクエスト株式会社の共同開発
- IoTセンサを対象物に取り付けることで、リアルタイムにその位置や状態を可視化する
- 稼働しているかどうかの判定例: レバー操作、作業台昇降、脚立の足を開く、人が座る
- 資機材の稼働状況や作業員のバイタルデータも可視化できる
- 建設現場のセンサデータはすべてAPI経由で3D K-Fieldのデータベースに格納
- 3D K-Fieldがデータの加工と可視化を行い、工事事務所や本社・支店のPCやタブレットから閲覧される
- すでに10以上のプロジェクトに導入済み
- 2024年までに鹿島建設の全建築現場への導入が目標
※出典: 資機材の管理・運用を効率化するシステム「KENLOGI」・「K-Field」を開発 | プレスリリース | 鹿島建設株式会社
- 屋内の位置測位 → ビーコン(発信器)
- 管理したい資機材にはビーコンかセンサ、作業員にはビーコンかスマホアプリ
- ゲートウェイを各フロアに設置し、Wi-fi経由でクラウドに送信
- 三点測位で位置を推定
- 屋外の位置測位 → GPS
システム構成紹介、開発の進め方
- システム構成
- Amazon CloudFront: Amazon S3のコンテンツ配信やキャッシュの最適化
- AWS Fargate: 複数AZにまたがるAPIサーバー、負荷増大時のスケーラビリティを実現
- Amazon Cognito: 認証に使用
- すべての構成要素をCloudFormationで管理
- 構築のポイント
- AWS Well-Architected Frameworkを活用
- セキュリティ、信頼性、パフォーマンス、コスト最適化、運用性
- サーバレスアーキテクチャで高速なアジャイル開発を実現
- 2〜3ヶ月スパンで「設計」→「開発」→「テスト」→「リリース」を回す
- コンテナ技術の採用により、ローカルでもクラウドでも同じ環境で開発ができ、開発効率が高い
- OSのパッチ適応などのインフラ管理から解放され、アプリケーション開発に集中
- マネージドサービスを活用し運用負荷と費用負荷を軽減
- 現場規模に応じて、負荷・コストを最適化できる
- DevOps
- 新しい環境立ち上げの高速化
- AWS CodePipelineなどを活用し、CI/CDパイプラインによる環境立ち上げの自動化
- スクラム開発も導入、2週間スパンで新機能のデプロイとレビュー
- マルチテナント化
- 新規現場立ち上げ時、AWS環境の立ち上げを鹿島建設側で行えるように
- アカウントを統合することで、費用削減にも寄与
- AWS Well-Architected Frameworkを活用
今後の展開
- 維持管理領域の鏡花
- 建物のライフサイクル; 企画・開発 → 設計 → 施工 → 維持管理
- この内、一番期間の長い維持管理フェーズを高度化させていく
- → スマートビル・スマートシティへの取り組みに、3D K-Fieldを活用
- スマートビルへの取り組み
- 快適なオフィス空間と施設の有効活用を実現するための、様々な実証実験とデータ収集(@鹿島赤坂別館)
- 従業員の位置情報
- 会議室や打ち合わせ机の利用人数・稼働率
- トイレ、喫煙室、リフレッシュルーム、食堂の利用状況
- エレベーターの在籍フロア、待ち時間
- 測位したデータをリアルタイムに3D K-Fieldに表示して分析
- 快適なオフィス空間と施設の有効活用を実現するための、様々な実証実験とデータ収集(@鹿島赤坂別館)
- スマートシティへの取り組み
- HANEDA INNOVATION CITY(羽田イノベーションシティ)の開発
- 現実世界から様々なデータを収集し、デジタル空間で再現してシミュレーション等を行う